WHO・ILOが長時間労働と脳・心臓疾患との関連性についての調査結果を発表(弁護士 岩城 穣)
1 WHO(世界保健機構)とILO(国際労働機関)は5月17日、長時間労働による健康リスク・死亡に関する調査結果を発表しました。
「週55時間」以上働く長時間労働者は、標準的な労働時間(35~40時間/週)と比較して、脳卒中のリスクは35%、虚血性心疾患のリスクは17%高くなるという内容です。
週55時間の労働は、労働基準法が定める週40時間の法定労働時間を15時間超えるものであり、月当たりにすると「月65時間」程度の時間外労働時間となります。
2 2001年に策定された現在の脳・心臓疾患の労災認定基準では、①脳・心臓疾患の発症前1か月間に「100時間」、又は②発症前2か月から6か月の間に平均「80時間」の時間外労働をしていた場合に労働災害と認定されることになっています。
そのため、100時間や80時間に足りないとして、労災と認められない事例が数多くあります。
現在、厚労省が設置した「専門検討会」で、この認定基準の改定の議論がなされていますが、これまでのところ、現状の「100時間・80時間基準」を維持する方向で議論が進められています。
3 これに対して、過労死弁護団全国連絡会議では、私もメンバーに入ったプロジェクトチームを作り、先日5月13日、時間外労働時間の認定基準を月65時間にすべきだとの緊急意見書を提出しました。
その4日後に、今回のWHO・ILOの調査結果の発表があったのです。私たちの意見書の正しさが、まさに証明されたといえます。
これを力にして、過労死認定基準の時間外労働時間を65時間にするよう、いっそう強く厚労省に求めていきたいと思います。